アーノルド・ローベル展 がまくんとかえるくん

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アーノルド・ローベル展についての所感をいくつかメモ代わりに残しておきます。


昨日(1/9)から始まった同展にどうしても行きたかった私は前売りが始まった直後に日付指定のチケットを購入済み。緊急事態宣言が発出されできるだけ自宅で、といわれた三連休の中日でしたが、同居家族だけで行くことは決まっていて会場でおしゃべりする人もいないだろうという前提のもと、行ってきました。今日のチケットを購入したのはどうしてもがまくんとかえるくんのぬいぐるみを手にいれたかったから。(今日の段階でのグッズの状況は、在庫は潤沢、いつでもきてね!って感じでした)


子供、ファミリー向けと思われる施設での開催で絵本作家をどう展示してくれるのか楽しみにしていきましたが、ローベルの個性を重視した展示の仕方にこれは良いぞと最初から本当にわくわくしました。わかりやすく簡潔な文章でのローベルご本人の紹介から始まり、がまくんとかえるくん以前の作品の展示が始まります。「ぼくのおじさん」を描くために書かれたスケッチのシンプルなラインが、本当に素敵。「ふくろうくん」「おはなしばんざい」「マザーグース」知っている絵本の原画がたくさん展示されています。簡略化された線の流れ、鉛筆スケッチの線の強弱にローベルの実在を身近に感じられました。これが展覧会のだいご味なのだ…そう思いながらずんずん進んでいくといよいよがまくんとかえるくんの展示コーナーになります。大きく印刷され読みやすく壁にはられていく「おてがみ」の全ページ。教科書に載っているお話ですので日本では一番有名な作品です。それから、各お話の要約のボードの横に、そのスケッチや下書き、原画などが展示されてあります。愛があるなあと思ったのは、ローベルと編集者とのやり取りが残された下書きの展示!やり取りとともにその後、作品がどうなったかもシンプルに解説してあってとても楽しいのです。編集者のがまくんとかえるくんへの愛が伝わってくるのもよい。時を超えて。「良い絵本作家の影には良い編集者がいるんだよね」と絵本編集者を父にもつ夫がつぶやいていました。

 


会場では3分ほどのがまくんとかえるくんのアニメーション作品が流されていました。クオリティが非常に高くてこれはただものではない人が作っていることはすぐにわかりました。アニメーション作家の加藤久仁生さんはアカデミー賞を受賞した方。そりゃ、実力もある方なのだろうけれど…。でも…これはがまくんとかえるくんを愛していないと作れない作品だよなあ…と思いました。愛がね、あふれてました。優しい二人の大事な一日一日、それが一年。お互いに何よりも大事な相手と、過ごす日々と別れて帰宅して相手を思う時間。思いをはせるだけでも胸がぎゅっとなるその時間を見事な技術で動かしてくれているんです。色使いも絵本を尊重したあわい茶色と緑。おどるようにがまくんのおうちへ行き、寝てるがまくんを起こし、二人でクッキーを食べ外へ行く二人。その動きひとつひとつが想像通り、いえ、想像を超えたリアルさで迫ってくるのです。私、このアニメーションを見るためだけにこの展覧会に行ってもいいと思います!!
グッズもかわいいものばかり。今回は人気どころばかり購入してきてしまったので、次回(行くの!?)は限定商品というやつも手を出してこようかな…と思っている次第です。立体になったがまくんとかえるくんは本当に本当にかわいいんです!!

 


さて、なぜ私がこんなにがまくんとかえるくんに惹かれるのか。それは多分、なんですけど、この物語が「愛情」を軸に描かれていると感じているからなのだろうなと分析しています。「愛情」といっても、いろいろありますのでここでは私が思うそれとがまくんとかえるくんの中で描かれている愛情がとても重なる、という表現が正しいかもしれません。

 

教科書に載っている「おてがみ」だけを読むとがまくんとかえるくんは親友なんだなあ、と思えるのですが、連作を最後まで読み通すと彼らの関係性にやはり「愛」それも「恋愛」に近いものを感じます。関係をはぐくむ中で事件や誤解が生じ、最後にお互いを尊重するために距離を置き、やはりあなたは私にとって不可欠な存在であると再確認し寄り添う姿はやはり恋人同士のそれに見えました。

 

私は強烈にこの話に惹かれていましたがそれがなぜなのかあまり深く考えたことはありませんでした。が、昨年突如ネットに流れてきたアーノルド・ローベルはゲイだった、という記事に衝撃を受け、そうか、だからかと納得もしたのです。だから、私はこの作品にこんなに惹かれていたのか、と。

 

特に本人が明確にコメントを残さずこの世を去ってしまった中、彼本人が同性愛者だったことが同性として描かれるがまくんとかえるくんの関係性に「恋愛」を持ち込む下地となっている!と断言してしまうのはもしかしたら自分勝手な解釈なのかもしれませんが、実際彼の娘さんがそう言っているので、そうなのだでいいのではないでしょうか。

 

今回の展示の中で、彼のセクシュアリティに言及する記述はありませんでしたが、発行された図表「アーノルド・ローベルの全仕事」の中にははっきりとその件が記載されています。ローベルの二人のこどものロングインタビューも収録されていて、ローベル個人がどういう人だったかを理解するのに多いに役立ちました。

 

私は、がまくんとかえるくんのあくまでもお互いを思い、対等でいたい、いようする姿勢がとても好きです。それはローベル本人がずっと大事にしていた価値観であったと思います。

 

人生の中で「好きな絵本作家は?」という質問がきたら、間違いなく私は「アーノルド・ローベル!」と答えるでしょうね。